10月28日定例会「ファミリービジネスと企業家精神の研究の系譜と今後の課題」静岡県立大学経営情報イノベーション研究科博士課程 濱口正樹氏

1.初めに

かつてものづくり大国であった日本の製造業が息を吹き返すためには、伝統・歴史・遺産の中で変化を起こし「続けている」長寿ファミリービジネスから得られる示唆について言及した。

2.企業家精神研究の系譜

広範な意味を内包している「企業家精神」という言葉が出現してきた背景と代表的な論者の定義を当時の時代背景を交えて説明。その後、学術研究としての企業家精神の「種類」と「研究範囲」の整理を行い、昨今の研究動向について課題を含めて紹介した。

3.ファミリービジネスと企業家精神研究の系譜

歴史的に個別に論じられていた企業家精神とファミリービジネスが2000年以降、重複領域で研究が出現してきたこと。海外有名ジャーナルの該当研究のメタ分析をから得られた傾向について整理を行った。その中で、企業家精神に対して、ファミリービジネスが状況に応じてプラスにもなるしマイナスにもなるというパラドクス状態の存在を言及し、その矛盾した結果を生み出す変数として「ファミリー特有の価値観・文化」と「経営資源」の存在を提起した。

4.日本のファミリービジネス後継者の企業家的「態度」とは

最後に、日本のファミリービジネス経営者インタビュー分析から、ファミリービジネス特有の企業家的志向性(Entrepreneurial Orientation)について紹介した。ファミリービジネスがもつ伝統、安定性、忠誠心などの価値観が相互に関連しながら、企業家的行動を制御していることが分かった。