2026年3月25日定例会 「ファミリービジネス2.0 ~ファミリービジネスをめぐる新しいトレンドと支援者のあり方とは」 株式会社ソーシャルキャピタルマネジメント 代表取締役社長 小林 博之氏

 本講演「ファミリービジネス2.0」は、事業承継を取り巻く環境変化を踏まえ、これからのファミリービジネスのあり方と支援者の役割を再定義するものである。近年、後継者不在率は低下傾向にあるものの、親族内承継は相対的に減少し、従業員承継やM&Aといった「脱ファミリー化」が進展している。その背景には、事業の老朽化や変革の遅れ、家族内コミュニケーションの希薄化などがあり、結果として後継者にとって魅力の乏しい企業となっている点が指摘される。
 一方で、持続的に成長するファミリービジネスには共通点がある。すなわち、理念や価値観といった「変えないもの」を明確にしつつ、ビジネスモデルは大胆に変革するという姿勢である。また、外部から学ぶ謙虚さや、コア事業強化と新規事業への挑戦を両立する「両利きの経営」、そしてファミリー内の良質な対話が重要である。

 事業承継は単なる社長交代や株式移転ではなく、「ビジネス・ファミリー・オーナーシップ」の三位一体で進める長期的なトランジションである。親族内、従業員承継、M&Aのいずれにおいても、戦略シナリオの策定とそれにふさわしいリーダーの育成が不可欠であり、10~20年単位での計画的な取り組みが求められる。
 さらに、ファミリービジネスにおいてはコーポレートガバナンスとファミリーガバナンスの両立が重要となる。形式的な仕組みだけでは不十分であり、ファミリーの価値観や感情を踏まえたプロセス設計が不可欠である。すなわち、ルール整備と同時に「学習するファミリー」としての成長が求められる。

 最後に、真の事業承継支援者には、短期的なスキーム提供ではなく、長期にわたり伴走し、信頼関係を築きながら変革を支える役割が求められる。ファミリービジネス2.0とは、こうした総合的な視点から企業の永続的成長を実現するための新たなアプローチである。